檜原フキ先生の漫画「大きいムキムキ小さいむちむち」が、本日最終話となった。感想を語るに先んじて、非常に素晴らしい作品を生み出してくださった檜原フキ先生には、多大なる感謝の意を表したい。
恵まれた体格を持ち、筋肉質な「大きいムキムキ」こと片岡がジムに通い始めたところ、女性スタッフの椎名に出会う。特筆すべきは、ジムのスタッフにもかかわらず、ウェアに脂肪ののったむちむちの腹肉が乗りかぶさっているということだ。少し小柄なこともあってまさに「小さいむちむち」である。ジムでの出会いをきっかけに両者の交流が進んでいくのが本作のストーリーだ。
本作の特徴は、大きく3つある。まず、片岡が熱狂的なむちむち愛者であるということだ。「女の子はむちむちが一番いい」と彼は豪語する。彼がむちむちで一番好きなのは「二の腕」だという。これはかなり重症である。ライトなむちむち好きはたいてい胸・腹・尻のどこかに執着する。太ももや二の腕といった箇所に注目するには、そういった典型的な誘引箇所から視線を引き離す相応の熱量というものが必要になる。要するに変態度が高いということだ。片岡のむちむちに対する変態的な愛が、本作のフェチズム性の高さを押し上げている。また、片岡のむちむち好きにバックボーンがあるのも個人的に高評価である。本作をただのむちむちイラスト集ではなく、ストーリーを有するれっきとした「漫画」に仕立てているのだ。
次に、椎名の絶妙な体型である。2次元で描かれがちな「ぽっちゃり」(あえて「むちむち」とは区別しよう)は、かたやモデル体型を基準にそうラベリングされた、至って標準的な体つきであったり、かたや脂肪の大半を胸と尻に寄せ集めお、腹にあるのは申し訳程度という偽ぽっちゃりであったり、そうかと思えば、メインキャラではないために肥満をわかりやすく大げさに記号化した結果まるまると太らされていたりといった具合である。本作の椎名のような60kg~70kg前半程度の、まさに「むちむち」と表現するにふさわしい肉付きは案外サブカルチャー界隈ではレア物なのだ。
そして、むちむちの純度が非常に高い。本作は、あえて分類するなら片岡と椎名の恋模様を描いた恋愛漫画である。しかし、そのラブストーリーは時間軸を進めるためのおまけに過ぎないのではないかというほどに、むちむちの描写に熱が入っている。先生のむちむちを書くことに対する溢れんばかりの情熱がそのペン先から椎名の体に宿り、彼女を火照らせ湯気を発させているのではないかと思うほどである。だいたいの回に1ページをまるまる使った椎名の肉厚なカットが存在し、見開きで椎名の豊満な体が顕現して読者の視界を覆い尽くすことも多い。終始一貫、軸がブレることなく「むちむち」という嗜好を表現し続けている。これが商業作品であるというのだから、よりその特異性は高い。
むちむち好きにとって、これほど満足度の高い商業作品は他にないのではなかろうか。同志の紳士諸君(もちろん淑女も大歓迎)はぜひ一度手にとって読んでみてもらいたい。
就職まであと14日。
